PROJECT STORY

01

プロジェクトストーリー

未知の領域のスピードに挑む
次世代高速車両のための
部品づくり

プロジェクト概要

これまで懇意にしていた重工業系の某企業から、今までの鉄道車両の設計思想とはまったく異なる、次世代高速車両の部品づくりの依頼が長崎鉄工所に寄せられた。これまで鉄道車両の部品づくりを手がけたことはあったが、今回のプロジェクトにおける車両は素材も設計もまるで別物。初めての挑戦だけに、会社としても新たな設備投資が必要不可欠で、果たして実現できるのかどうか、経営陣・営業・生産技術・製造ふくめ全社一丸となって取り組んだプロジェクトとなった。

プロジェクトメンバー

  • 青木 洋行Hiroyuki Aoki

    業務部 部長
    2006年入社

    前職は、アウトドアの研修施設で子どもたちに星の観察や自然鑑賞などをレクチャーするインストラクターだった異色の経歴を持つ。そのコミュニケーション力を活かして、営業部門を牽引するグループリーダー。
  • グエン バン ラム

    製造部 小型フライスグループ
    2017年入社

    ベトナム出身で、メカトロニクス機械工学技術学科を卒業。世界に誇る日本のものづくり技術を学びたいと、長崎鉄工所に入社した。日本での生活を満喫しながらも、妻の手づくりのベトナム料理が一番の楽しみ。

Episode_01

国家プロジェクトとの出会いは、
不安しかなかった

青木:発注の経緯としては、10年来のお付き合いのあるお客様から話をいただいたことがきっかけになりました。従来の鉄道車両は溶接で仕上げていくのですが、次世代高速鉄道の車両の素材はアルミ。アルミの溶接というのは、車両走行時の事故やトラブルの観点からも信頼性が低いため、安心安全を優先すると溶接ではない部品構造にする必要性があり、当社に声がかかったんです。ただ次世代高速鉄道は国家的プロジェクトという事もあり、なかなか二つ返事でやります!とは言えないような状況で…
グエン:初めて図面を見たときは「えっ!?」という感じで、本当にこれが形にできるのか半信半疑でした。走行時の電力を抑えるために、軽量化も求められる車両で、材料の8割以上は削りつつ、精度も求められる。素材的には飛行機の部品に近いのですが、それ以上に設計思想が今まで見たことないものだったんです。
青木:社長も含めて、やるかやらないか、すぐに協議をしました。このワークをやるためには、どんな工作機械が必要か。イチから洗い出しをして、トータル的にリスクとメリットのバランスを判断した結果、GOサインが出てプロジェクトがスタートしました。

Episode_02

仕上がりが負けていた悔しさを
忘れたことはない

グエン:プロジェクトは始まったものの、これまで一度もやった事のない設計だったので、工場長も含めて、どうアプローチしていくか皆で話し合いました。どんな工具を使って、どうプログラミングしていくか。手探りの状態から進めていきましたね。
青木:そうして一発目の試作品が完成して届けたあと、先方から「同じ部品をつくった他社製品があるので、見に来ませんか」と連絡があったんです。嫌な予感を抱えながら訪問してみると、当社と他社の部品が並べてあって、明らかに他社の方の見た目がキレイでした。表面がキレイというのは切削の条件も合っていて、スピードも早いということ。切削の条件が合っていないと、仕上げ作業にペーパーをかけなくてはいけなくなり、しかもアルミはペーパーをかけるとくすんでしまいます。
グエン:見た目がキレイな製品は、それだけ効率のいい削り方をしているということなのです。効率が良ければ、工程数も減るのでコストを抑えられます。ただ効率を求めすぎても、寸法の精度が犠牲になることもあるんですよ。
青木:おそらく精度の面では、当社の方が上だったと思います。図面通りの寸法になっているかどうかでは、当社に軍配があがっていたとは思うのですが、先方からは『もう一度、考えてみてください』と心に刺さる言葉を投げかけられました。

Episode_03

初めての挑戦をやりきったからこそ、
成長がある

グエン:お客様から改善のきっかけを与えてもらったわけですから、ものづくりの魂に火がついたというか、作り手としては結果として応えなくてはいけないという想いが強くなり、必死にテストカットを繰り返しました。アルミは削りやすい分、最適な条件を出すのが難しい素材。工具を変えたり、削り方を変えたり、試行錯誤しましたね。
青木:今回はアルミの中でも特殊な素材だったこともあって、先方から材料は提供されていたのですが、それでも材料1個につき200〜300万円はするもの。試作に失敗はつきものなのですが、やはり緊張はするものです。
グエン:最終的には努力の甲斐あって、寸法の精度は保ちながらも、他社のような仕上がりにかなり近づくことが出来ました。半年から1年かけて試作を手がけて、納期にもしっかり間に合わせることができたので、やっとひと安心というか、大きな達成感がありました。
青木:このプロジェクトによって、生産技術や製造の能力も一段階広がったように思います。アルミ加工の条件においても、今回の経験を経たことで「こんな事ができる」という幅が広がりました。営業としても新しい実績としてPRできるので、大きな意味のあるプロジェクトだったと感じています。


トップに戻る